♪ さよなら あんころもち またきなこ ♪
夕方になるとお支度の廊下では、あちらこちらでこのわらべうたが聞こえてきます。
私たちの保育園の帰りの挨拶なのです。
2人で向かい合って両手を繋ぎ、拍に合わせて上下に揺らしながら屈伸をして、
最後に「タッチ」と言って両手を合わせます。(園独自の遊び方です。)
“さようなら!また明日、元気に会いましょうね!”
お話ができる子も、まだできない子も、そんな思いを込めて目を見て触れ合い、
さよならの挨拶をしています。
朝、お母さんと離れがたい時、「じゃあ、“あんころもち”しようか?」
の一言で切り替えて、お母さんとさよならの挨拶ができる子もいます。
わらべうたはそんな時にも、私たちを優しく支えてくれるようです。
秋に入り、0歳児クラスの子どもたちも大きくなって、
大人と“あんころもち”の挨拶ができるようになりました。
Yくんは“あんころもち”の言葉を聞くだけで俄然やる気になり、
さよならの場面でなくても高速ハイハイで大人のところへ来て両手を出し、
“やって!” の仕草。
2歳児クラスのお姉ちゃん仕込みの振り付けを “もっと!もっと!” と楽しんでいます。
それを見た他の子どもたちも “やって~!” のリクエスト。一大ブームとなりました。
そんなある日、座っていたSくんの両手をRちゃんがそっと握り始めました。
Sくんはびっくり。最初は手をほどこうとしていたのですが、
私の「もしかしてRちゃんは“あんころもち”がしたいのかな?」という言葉に
“そうか!” と理解した様子。
2人で手をつないでそっと立ち上がり、歌に合わせてぎこちなく揺れ始めました。
初めてできた“タッチ”の優しいこと!
手を合わせる仕草は、大人が思っているよりも難しく、
お互いに集中して一生懸命合わせているので、ゆっくり優しくなるのですね。
2人の “やったあ!できた!” という達成感と、
ほっとしたような嬉しそうな笑顔が印象的でした。
そこから2人は“あんころもち”のできる相手、として親しみが増したようです。
「“あんころもち”やる?」
「いいね!やろう!」
喃語から少しずつ言葉の見え始めたばかりの子どもたちですが、
アイコンタクトと仕草だけで通じ合い、こんな言葉が聞こえてくるようです。
時には相手がやる気にならず、“やろうよ!” “やりたくないよ!” “やめて” “何で~” と気持ちがすれ違うことも。
笑ったり、怒ったり、泣いたり、忙しい子どもたち。
身体全体で自分の気持ちを伝えることで、
相手にも自分とは違う気持ちがあることに気づき始めています。
一緒に遊ぶには、お互いの気持ちが通じ合うことが大切ですものね。
ぶつかって、考えて。
成長していく子どもたちは、みんなキラキラと生きる力にあふれています。
振り返って、言葉を持つ私たち大人は、相手とそっと手を合わせるように、
気持ちを通い合わせることを忘れていないだろうか?
子どもたちの姿からふと、そんなことを思ったりもしました。
sayo-A